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就業規則の「制度設計」とは?~規程作成との決定的な違い

3 日前
読了時間: 8分
就業規則を作成する際に生じる制度設計と規程作成との違いをフローチャートで示した図


最近、制度設計という概念が良く語られます。当事務所でもご質問を頂くことがあります。

「いくつかの事務所で、就業規則の作成を依頼しようとしたところ、制度設計は行わないとか、別料金と言われたのですが、制度設計までやってもらえますか」というご質問です。


そこで、「ところで、制度設計って何ですか」とお聞きすると、「私もわからないんです」と仰る方もいて、二人で笑ってしまったこともあります。


確かに、制度設計ってわかりにくい説明ですよね。AIに聞いても抽象的で何となくしかわからないと思います。そこで、この記事では具体例を交えつつ、当事務所が考える就業規則における制度設計について、できるだけ言語化して解説します。


1.制度設計が必要になるのは、会社の要望を問題なく実現する方法を考える必要があるから


まず、「制度設計が必要な就業規則作成はどのようなケースか」から端的にご説明します。


就業規則について作成の目的を伺うと、法律上の義務だからという方がいる一方で、「就業規則の整備を通じて●●を実現したい」という明確な目的をお持ちの企業があります。しかし、そのご目的を達成するためには、ただ就業規則に書けばよいというわけではないのです。そこで、必要になる考え方が「制度設計」です。


会社が就業規則を通じて実現したい目的がある場合、➀「どうやれば、実現できるか」が誰にとっても明確で、また、➁その実現したい内容が、特に問題がなければ、その内容を整理して就業規則の記載すれば済みます。


極端にいえば、打合せすら不要で、ヒアリングシートに答えてもらい、自動で就業規則ができます。AIで規程化にすることも可能です。しかし、実際には、大抵、検討すべき問題が出てきます。


例えば、会社が「こういう働き方にしたい」と希望していても、具体的にどうすればそれを実現できるのかまで明確になっているとは限りません。実現する方法が複数考えられたり、どの方法が会社に適しているのか分からなかったりすることがあります。この場合には、まず会社の希望をどのような仕組みにすれば実現できるのかを考える必要があります。


また、実現する方法が決まっていたとしても、そのまま実施すると法律上問題があることもあります。例えば、会社が、「こういう働き方にしたい」と希望していても、そのまま実施すると法律で禁止されていることもあります。就業規則を作成する際には法律上の縛りがあり、自由に何でも決められるわけではないからです。


また、法律上問題はなくても、以下のようなケースもあります。

  • 問題社員に悪用されかねない制度になる

  • 会社が意図していない問題が生じる可能性がある

  • 条件設定を誤ると、後から問題になる


このような場合には、会社の実現したいことを達成しつつ、問題が生じない仕組みにするにはどうすればよいかを考えることが制度設計の出発点です。


2.制度設計では実際に何をするのか~制度設計から規程の作成までのフロー


以下の流れをご覧ください。制度設計から就業規則への反映までの流れですので、イメージしやすいと思います。


  1. 会社が「就業規則の作成を通じて何を実現したいのか(目的)?」を明確にする

  2. その目的を就業規則を通じて、どう実現するかを検討する

  3. 考えた方法に問題がないかを検討する

  4. 問題があれば、問題のない方法や仕組みにする

  5. 会社として問題なく導入できる制度になる

  6. 最後に、就業規則に反映する


このように、制度設計とは、こ会社が就業規則を通じて実現したいことを、会社に導入できる具体的な仕組みにしていくことと言えます。


会社の事情を無視して「法律」の内容を就業規則に書いても意味がありません。それが意味を成すのは、会社の就業規則作成の目的が法令遵守である場合だけです。また、会社の実現したいことをそのまま就業規則に書けないケースもあります。法律上問題が生じることもあるからです。更に、何らかの対策を講じずに導入すると、後から問題になるケースがあることは先ほどお話した通りです。


就業規則における制度設計から規程作成までの流れと違いを端的に示した図


3.完全週休二日制を例に制度設計を考えます


抽象的なお話が続きましたので、ここで具体例を挙げてご説明します。

例えば、


「スタートアップ企業で、人手が足りず完全週休二日制が難しい。」


このような企業に対して、仮に、現状が違法だったとしても、「完全週休二日制にして就業規則に書きましょう」では意味がありません。


  1. どうしたら、完全週休二日制を導入できるのか

  2. 完全週休二日制の導入が無理なのであれば、どうしたら良いか


これこそが、制度設計です。様々なことを検討して「会社として、これなら導入できる」「法的にも問題ない」といえる具体的な仕組みを作るのが制度設計です。


就業規則に何を書くかの前に行うべきことがあるのです。


4.制度設計と「規程を作る仕事」の違い


制度設計は、会社が実現したいことを問題なく導入できる具体的な仕組みにする仕事です。一方、就業規則(規程)作成は、その過程で決まった内容を就業規則に反映する仕事です。制度設計が終わっていれば、規程作成そのものは文章化するだけですから、AIによって大幅に効率化できます。


専門家と話をしていて感じることだと思いますが、自分でも明確になっていない段階でも話を引き出してくれて提案してくれる人がいます。その一方で、聞いたことにしか答えてくれない人がいると思います。質問事項もリアリングリストに基づくものが中心の専門家です。制度設計で求められるのは前者の専門家です。


これは、AIを使って制度設計をする際にも重要です。制度設計のアシストとして使用する場合には、物凄い威力を発揮しますが、「AIは足りない情報を見つけ、話を引き出して提案することまでしてくれません。人間が主導権を握って活用する必要があります。



5.「オーダーメイドの就業規則」なら、制度設計までしてくれるのか


したがって、「オーダーメイドの就業規則」「完全オリジナルの就業規則」「会社ごとに独自の就業規則を作成」という言葉だけでは、会社独自の制度について、問題点まで検討し、必要なら制度そのものを組み直してくれるのかは分かりません。


会社からヒアリングした内容を、その会社独自の言葉として文章に落とし込めば、「オーダーメイド」の就業規則とは言えます。就業規則の目的条文に「会社の想い」をいれれば、オリジナルの就業規則とも言えます。しかし、就業規則の文章だけオリジナルにしても、会社の問題は解決しないからです。


よく「就業規則を見せてくれないのですが、どうしたら良いですか」という社員質問がQ&Aサイトでよく目にしますが、これは、会社が実行できないことが書いてあるからではないでしょうか。本来、そのようなことがないようにするのが制度設計の役割の1つでもあります。


6.就業規則を依頼するときに確認してほしいこと


就業規則の依頼をする際には、この制度設計まで含まれるのかは確認した方が良いと思われます。「オリジナルの就業規則を作成します」という場合であっても同じです。「当社が実現したいことについて、どうすれば実現できるのか。そこから一緒に考えてもらえますか」と確認するのが1番だと思います。「制度設計が含まれますか」だと人によって、イメージすることが違うからですです。また、打合せの回数でもある程度わかると思います。御社の実現したいことが、どれぐらいの打合せの回数で可能なのか。それをお考えいただければ、自ずから答えは出ると思われます。


当事務所は就業規則専門事務所です。開業以来、就業規則に関連した業務に専門特化し続けてきましたが、最も大変なのが「規程をつくる前の段階」だと痛感しております。今や、規程を書くことはAIで大体可能になりましたが、この制度設計の部分はAIにも容易に代替できない業務です。しかし、この記事で私が書いた内容も制度設計の絶対的な定義だとは考えず、御社がベストな就業規則の専門家を探す際のご判断の1材料とお考えいただくことをお勧めします。


なお、制度設計まで行うと、料金は高くなりがちのようですが、当事務所では就業規則とは別料金(別業務)とは考えず、就業規則の料金の範囲内で行っています。なぜなら、当事務所の業務は企業の人事労務の課題を解決することだからです。お客様企業にとって実現したいことがあり、そのための制度設計が別料金だとしたら、当事務所の業務と矛盾します。制度設計は就業規則作成の一過程だと考えています。


ところで、実際の料金についてですが、コスト削減や経営合理化によって料金は標準価格帯の範囲内となっております。具体的な料金や考え方は以下のページをお読みください。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


執筆者

フェスティナレンテ社会保険労務士事務所

代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司


執筆者プロフィール

開業以来一貫して、就業規則の関連業務で99%超の就業規則専門特化の社会保険労務士。業務のほぼ全てが就業規則関連であることから、顧問社労士・顧問弁護士がいるにもかかわらず就業規則の依頼を受けたり、1度は他の専門家に就業規則を作成してもらった経験がある企業からも就業規則の依頼を受ける。両者を合わせると、お客様企業の7割を超える。就業規則の作成は企業の課題解決の手段に過ぎないという一貫した考えをもち、「課題解決手段型就業規則」という名称で商標を取得し、法令遵守と会社の事情を両立させながら、企業が実現したいことを具体的な制度・仕組みにしていく支援を重視している。




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