フレックスタイム制の会社のメリット:採用、残業削減
- 特定社会保険労務士 小嶋裕司

- 10月1日
- 読了時間: 6分
更新日:11月19日

フレックスタイム制は誤解の多い制度です。就業規則の整備や労使協定の締結など、行うべきことが多く、デメリットも少なくありません。
しかし、それでも、多くの企業が導入しています。なぜなら、それを上回るメリットがあると考える企業も多いからです。それでは、そのフレックスタイム制のデメリットを上回るメリットとは何でしょうか?
この記事ではフレックスタイム制のメリットについて整理してご説明します。
なお、フレックスタイム制のデメリット、及び対策は以下の記事をお読みください。
フレックスタイム制の社員のメリット
まず、社員にとってのメリットについてですが、社員にとって魅力的な制度であることは考えるまでもないでしょう。
好きな時間に来て好きな時間に帰れる
通勤ラッシュを避けられる
自分のペースで効果的に仕事を進めることができる。
自分で始業終業時刻を決められるので突発的に出来事があっても安心(介護など)
子供の送り迎えに合わせて始業終業時刻を決める(育児)
人間は思い通りの力を発揮する時間帯が違ったりします。
クリエイティブな業務であれば従業員に始業・終業の時間をある程度まかせることにより、効果的に仕事を進めることができるのは事実です。
では、会社のメリットは何でしょうか?
フレックスタイム制の会社のメリット
まず、社員にとって魅力的な働き方であれば、人を採用しやすくなります。それは、メリットです。しかし、他にも企業側にメリットがあります。フレックスタイム制の導入により、労働時間を減らす(残業削減)ことが期待できます。なぜなら、フレックスタイム制は、精算期間(多くの会社では1か月になるでしょう。)で時間外労働を考えていきますので、1日、1週間の時間外労働という問題は生じなみからです。これは、企業にとっての大きなメリットになります。
フレックスタイム制は育児介護との両立で語られる制度ですよね。これは、フレックスタイム制を導入することで、フルタイムで働きながら、育児や介護と両立させることができる制度の一つであるということを意味しています。言葉を変えると、労働時間(残業)を減らす効果があるということを意味しているということになります。
しかし、これだけでは、伝わらないと思いますので、具体的にご説明します。
フレックスタイム制で残業削減の具体例
時間外割増賃金は、1日8時間又は週40時間を超えて働いた場合、必要になります。
しかし、毎日、9時~18時(8時間)という働き方が合理的でしょうか?
毎日必ずしも8時間働いてもらわなくても良い日はないですか?
逆に、10時間働いてもらった方が良い日はないですか?
例えば、以下の労働時間をみてください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
4h | 8h | 10h | 6h | 8h | 休 | 休 |
上記の勤務では、週40時間以内に収まっていますが、日本の法律では、このような形で働いた場合、8時間を超えた日(水曜日)には割増賃金の支払いが必要になります。
なぜなら、法定労働時間は、1日単位、週単位で見ていくからです。これを回避する制度が変形労働時間制で、そのうちの1つがフレックスタイム制なのです。
変形労働時間制には以下の4つがあります。
1か月単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制
1週間単位の非定型的変形労働時間制
フレックスタイム制
この記事をご覧になっている方は、フレックス制に強いご関心がある方だと思いますので、他の制度については解説いたしませんが、他の変形労働時間制はシフトで予め始業・終業時刻を特定する必要があります。
一方、フレックスタイム制は始業・終業の時刻を労働者にまかせる制度ですので、事前にシフト等で各日の始業・終業の時刻を特定しておく必要がありません。これは、メリットでもあり、また、デメリットでもあります。
今の時代、「毎日、8時間決められた時間に働いてもらう必要がない!」
そんな会社(業務)も多くなってきました。そのような会社(業務)にとってフレックスタイム制は残業削減の効果がありますので、会社にとっても良い制度です。
ただ、冒頭でお伝えした通り、フレックスタイム制には、会社にとってデメリットも多い制度ですので、その対策をしたうえでの導入は必須です。導入の前に、どのようなデメリットがあるのか、そして、その対策を知っておくことは非常に重要です。
フレックスタイム制と他の柔軟な働き方の組合せ
フレックスタイム制の導入を検討される際には、特にスタートアップ企業において、他の柔軟な働き方との組み合わせが有効です。
スタートアップ企業の就業規則に関する具体的な事例や、自由で柔軟な働き方を導入する際の注意点については、『スタートアップ企業の就業規則の特徴~自由な・柔軟な働き方を認めるベンチャー企業』をご参照ください。
参考 フレックスタイム制の条文
労働基準法第32条の3(フレックスタイム制) 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第2号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。 1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲2.清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が労働基準法第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。) 3.清算期間における総労働時間 4.その他厚生労働省令で定める事項 |
執筆者
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司
執筆者プロフィール
就業規則関連特化の社会保険労務士(業務の99%超)。特に、労働時間・残業代の問題に強く、変形労働時間制の導入の依頼はクライアント企業の4分の1を占める。変形労働時間制が向いている企業・向いていない企業等、会社に合った制度の提案が可能である。


