フレックスタイム制の会社側メリット:残業代(時間外割増賃金)抑制を社労士が事例で解説
- 2025年10月1日
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更新日:1月29日

フレックスタイム制は誤解の多い制度です。就業規則の整備や労使協定の締結など、行うべきことが多く、デメリットも少なくありません。
フレックスタイム制のデメリット、及び対策は以下の記事をお読みください。
しかし、これだけ多くのデメリットがある中、それでも、多くの企業が導入しています。なぜなら、「それを上回るメリットがある」と考える企業も多いからです。それでは、そのフレックスタイム制のデメリットを上回るメリットとは何でしょうか?
社員にとってメリットが多い制度なのは、詳しく解説しなくてもご理解いただけると思いますので、会社にとってのメリットについて、この記事ではご説明します。
1.フレックスタイム制の会社のメリット
主に、「採用面で有利になる」「残業代(時間外割増賃金)抑制」の2つがあります。
まず、採用で有利になるという点についてです。社員にとって魅力的な働き方であれば、人を採用しやすくなります。社員のメリットが会社のメリットになるという考え方ですね。優秀な人材が応募してくる可能性は高まります。実際、求職者の中には「フレックスタイム制 求人」と条件を絞って、求人企業を探している方がいます。
特に、家庭の事情などから、定時(例:9時~18時)の働き方は難しくても、フレックスタイム制なら働けるという方は一定数いらっしゃいます。そのような方へ向けたアピールにもなります。この点については、ご理解いただけると思います。
しかし、フレックスタイム制を導入する会社のメリットは、それだけではありません。時間外労働を減らすことが期待できます。なぜなら、フレックスタイム制は、1日、1週間単位で時間外労働を考えず、精算期間(多くの会社では1か月になるでしょう。)で考えていくからです。時間外労働が減れば、残業代も減ります。これは、企業にとっての大きなメリットになります。
これだけのご説明では、伝わらないと思いますので、具体的に事例でご説明します。
1-1 フレックスタイム制で残業代抑制の具体例(事例)
時間外割増賃金は、1日8時間又は週40時間を超えて働いた場合、必要になります。
しかし、毎日、9時~18時(8時間)という働き方が合理的でしょうか?
毎日必ずしも8時間働いてもらわなくても良い日はないですか?
逆に、10時間働いてもらった方が良い日はないですか?
例えば、以下の労働時間をみてください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
4h | 8h | 10h | 6h | 8h | 休 | 休 |
上記の勤務では、週40時間以内に収まっていますが、日本の法律では、このような形で働いた場合、8時間を超えた日(水曜日)には割増賃金の支払いが必要になります。
また、このことは、週の単位でも当てはまります。以下の労働時間をご覧ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
9h | 9h | 9h | 9h | 9h | 休 | 休 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
7h | 7h | 7h | 7h | 7h | 休 | 休 |
上記の勤務では、2週間を平均すれば、週40時間に収まっていますが、第1週目は週40時間を超えています(第1週45時間/第2週35時間)。したがって、週40時間を超えた時間が時間外労働となります。
1-2 変形労働時間制の一形態としてのフレックスタイム制
このように、法定労働時間は、1日単位、1週間単位で見ていくのです。この原則の例外に該当する制度が『変形労働時間制』で、そのうちの1つがフレックスタイム制なのです。
変形労働時間制には以下の4つがあります。
1か月単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制
1週間単位の非定型的変形労働時間制
フレックスタイム制
この記事をご覧になっている方は、フレックスタイム制に強いご関心がある方だと思いますので、他の制度については解説いたしませんが、他の変形労働時間制はシフト等で予め始業・終業時刻を特定する必要があります。
一方、フレックスタイム制は始業・終業の時刻を労働者にまかせる制度ですので、事前にシフト等で各日の始業・終業の時刻を特定しておく必要がありません。これは、会社にとって、メリットでもあり、また、デメリットでもあります。
1-3 フレックスタイム制 会社のメリットまとめ
フレックスタイム制の会社のメリットを見てきましたが、いかがだったでしょうか。採用で有利になる以外にもメリットがあることをご理解いただけたでしょうか。
「毎日、決められた時間に働いてもらう必要がない」
今の時代、そのような会社(業務)も多くなってきました。そのような会社(業務)にとってフレックスタイム制は時間外労働が減る効果がありますので、採用で有利になる以外にも、会社にとってメリットがある制度です。1日8時間、週40時間を法定労働時間として割増賃金を支払っていく必要がなくなるからです。
ただ、冒頭でお伝えした通り、フレックスタイム制には、会社にとってデメリットも多い制度ですので、その対策をしたうえでの導入は必須です。導入の前に、どのようなデメリットがあるのか、そして、その対策を知っておくことは非常に重要です。
また、時間外労働が思ったように減らないケースも出てきます。会社ごとにご事情が違いますので一般論としてお話しづらい部分ですが、時間外労働を減らすことが目的の場合には、対策はしておく必要があります。
2.フレックスタイム制に加えて、他の柔軟な働き方も含めて検討している方へ
フレックスタイム制の導入を検討される際には、特にスタートアップ企業において、他の柔軟な働き方との組み合わせたいというご相談を受けます。例えば、「テレワーク+フレックスタイム制」などです。会社にとってもメリットがあり、社員にも喜ばれる素晴らしい制度ではありますが、リスクもあります。
スタートアップ企業の就業規則に関する具体的な事例や、自由で柔軟な働き方を導入する際の注意点については、『スタートアップ企業の就業規則の特徴~自由な・柔軟な働き方を認めるベンチャー企業』をご参照ください。
また、フレックスタイム制の導入目的が残業削減であるなら、他の制度や施策と比較検討したうえで導入を決めた方が良いと思われます。残業削減のための制度は、変形労働時間制以外にも多く存在します。残業削減ではなく、採用面のことをお考えなら、例えば、時差出勤などと比較検討してからでも遅くはないと思います。いずれにせよ、デメリットを最小限に抑え、メリットを最大化する制度の導入をお勧めします。
「自社だけでの判断が難しい」と感じたら、当事務所の無料相談をご利用ください
当事務所では対面・オンラインどちらでも無料相談を行っております。御社の目的と方針を伺い、メリットとデメリットの比較、デメリット対策の可否、他の制度との比較などを整理して、「どのような形で」、又は、「どのような制度」の導入が良いか御社とご一緒に慎重に検討いたします。
営業行為などは一切行わないことをお約束します。無料相談の詳細は以下をご覧ください。フレックスタイム制等の導入には就業規則の変更が必要ですので就業規則無料相談となっておりますが、就業規則に限らず、フレックスタイム制等について広くご相談いただけます。
執筆者
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司
執筆者プロフィール
就業規則関連特化の社会保険労務士(業務の99%超)。特に、労働時間・残業代の問題に強く、変形労働時間制の導入の依頼はクライアント企業の4分の1を占める。変形労働時間制が向いている企業・向いていない企業等、会社に合った制度の提案が可能である。なお、フレックスタイム制については、スーパーフレックスに近い制度の導入も経験があり問題点には精通している。
参考 フレックスタイム制の条文
労働基準法第32条の3(フレックスタイム制) 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第2号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。 1.この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲2.清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が労働基準法第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月以内の期間に限るものとする。次号において同じ。) 3.清算期間における総労働時間 4.その他厚生労働省令で定める事項 |


