【歩合給 残業代の本質】なぜ、歩合給には割増賃金が少なくて良いのか?~通常の賃金と計算方法が違う理由
top of page

【歩合給 残業代の本質】なぜ、歩合給には割増賃金が少なくて良いのか?~通常の賃金と計算方法が違う理由

更新日:3月28日


歩合給の本質(割増賃金の計算方法が違う理由)
歩合給の本質(割増賃金の計算方法が違う理由)

歩合給(出来高払給)は通常の賃金よりも割増賃金が少なくて良いということはご存じでしょうか?割増賃金の額が圧倒的に少なくなります。


まず、歩合給とは何かについてですが、一言で言うと、「出来高払い制その他の請負制 によって定められている賃金」のことを言います。以下で簡単にまとめています。

歩合給

出来高給

何に対して

支払われるか

売上や利益などの結果に対して支払われる

生産した量(数)や完成した仕事の単位に対して支払われる

指標は何か?

売上や利益などが成果の主要な指標となる場合

成果物(仕事)が物量で測れる場合

計算式例

指標(利益)×○%

個数等×○円

上記の表は、あくまでも一例だとお考えください。また、通常の賃金と歩合給の計算方法の違いなどの詳細や完全歩合が違法なのか等の基本的な知識は、当事務所のもう一つのブログで詳細に解説していますので、以下のブログをご覧ください。


この記事では、上記の基本的な知識を踏まえた上で、「なぜ、割増賃金の計算方法が違うのか?」という歩合給の本質という一歩突っ込んだお話をさせていただきます。


ただ、その前に、まずは、「基本給で賃金を支払った場合と、歩合給で賃金を支払った場合」の金額の違いを確認いたします。


【事例】全額基本給と全額歩合給で30万円が支払われた場合の割増賃金額の違い


ある会社のAさんの賃金30万円が①全額基本給で支払われた場合と、②全額歩合給で支払われた場合でどれぐらい割増賃金額(賃金総額)が違うのかを計算してみます。なお、以下を前提に考えます。


1か月の平均(及び当月の)所定労働時間:

160時間今月のAさんの残業時間:60時間で計算


※ また、この会社では160時間を超えたところから法定時間外割増賃金(1.25)を支払っているという前提で解説します。


①全額基本給で30万円支払われた場合


{基本給(30万)÷1か月平均所定労働時間(160時間)} ×(1.25)×時間外労働時間数(60時間)=(割増賃金の月額)14万625円

賃金総額 基本給30万+14万625円 = 44万625円


②全額歩合給で30万円支払われた場合


{歩合給(30万)÷1か月の総労働時間(160+60時間)} ×0.25×時間外労働時間数(60時間)=(割増賃金の月額)2万455円

賃金総額 歩合給30万+2万455円 = 32万455円


いかがでしょうか?歩合給 残業代の計算方法が違うため、賃金総額が12万円以上違ってきます


通常は、上段①のように、賃金を1か月の平均所定労働時間で割って時給単価を出して、それに、1.25をかけて、1時間の割増賃金の単価を出します。それに、時間外の労働時間数をかけて、その月の時間外の割増賃金額が決定します。


 一方、歩合給は、歩合給をその月の総労働時間で割って1時間の単価を出します。時給単価がぐっと安くなります。しかも、それに、1.25ではなく、0.25をかけて時間外割増賃金の単価を出します。それに、時間外労働時間数をかけて、その月の時間外の割増賃金総額が決定します。


 したがって、両者の賃金の総額がこれほど違ってくるのです。決定的に残業代が違います。


そこで、次に、生じる疑問ですが、「なぜ、計算方法が違うのか?」です。もっと言うと、なぜ、歩合給には、こんな計算方法が認められるのかです。その答えは、以下の通達にあります。


「賃金が出来高払い制その他の請負制(歩合給)によって定められている労働者に関しては、時間外労働があった場合でも、通常賃金部分(100%)は既に支払われているため、100%部分の賃金の支払いは不要である。」平成11年3月31日基発168号

歩合給の100%、つまり「1」の部分は既に30万円で支払われているため、0.25のみの支払いで良いということなのですが、これが中々ご理解いただけないようです。


あまりに他の賃金と考え方が違うからだと思われます。そこで、この記事では、この部分を詳しく解説します。


なぜ、歩合給の割増賃金の計算方法は違うのか?


以下で「いくらの賃金」が「何に対して」支払われているかを細かく分解しました。以下をご覧いただくとご理解いただけるのではないかと思います。


全て基本給で支払った場合

①所定労働時間の労働(160時間)の働きに対する賃金 =30万円

②所定労働時間の労働60時間の労働に対する賃金(1.25のうちの「1」部分)

=11万2500円

③60時間に対する割増部分の賃金(1.25のうちの「0.25」部分)=2万8125円


全て歩合給で支払った場合

①「所定労働時間+所定外」の労働時間を合わせた220時間での成果に対する賃金=30万円 

②220時間に対する時間外労働の割増賃金=2万455円


残業60時間分の賃金も含めた通常の賃金は30万円で既に支払われているということです。

もし、社員が220時間で41万2500円(30万+11万2500円)の成果を歩合給で出せば、賃金総額は 基本給で支払ったのと同じ金額になります。計算をしてみてください。


歩合給の本質のまとめ


歩合給の本質は、賃金の内訳を細かく分解するとご理解いただけたのではないでしょうか?


通常の賃金は労働時間に対して支払われるものであるのに対して、歩合給は成果に対して支払われるものなので、このような計算方法が認められているのです。これが歩合給の本質です。


歩合給は、導入しやすい業種と導入しにくい業種がありますし、参考文献などが少ないのも難点ですが、導入できる企業は導入を検討する価値のある制度だと思います。


ただし、また、歩合給は「個人プレーに走りがちになる(チームプレーに問題が生じる)」という問題点もよく指摘されるところです。対策を講じる必要もあるでしょう。また、割増賃金の異なる計算方法が認められている以上、通常の賃金にはない法律上の規制などもあります。考え方も通常の賃金とは全く違うので、実際に歩合給を導入する場合には詳しく調べるか、専門家にご相談することをお勧めします。非常に難しい内容が多く含まれます。


当事務所でも無料相談を行っていますので、自社で歩合給を導入しようとして行き詰まった場合、無料相談をお受けいただくことも可能です。賃金の無料相談の詳細は以下のページをご覧ください「https://www.festinalentesroffice.com/tingin」


最後までお読みいただき、ありがとうございました。








最新記事

すべて表示

賃金規程等の諸規程 作成のポイントと料金

このページをお読みの方は、賃金規程、退職金規程、副業規程、テレワーク規程等をはじめとした諸規程を作成しようとお考えの方だと思います。 このページでは、以下の流れで諸規程を解説します。このページ1ページで諸規程についての概要は抑えることができる内容になっています。...

中小企業の退職金規程 作成のポイント

このページにお越しの方は退職金規程を作成しようとお考えの経営者・実務の責任者の方だと思います。 当たり前の話ではありますが、退職金は会社を辞めていく方に対して支払うお金です。辞めていく社員に対して退職金を支払うより、現在、会社で働いている社員に対して、少しでも多くの賃金を支...

bottom of page