top of page

ChatGPT進化時代の就業規則作成—AIと専門家の違いで経営者が知っておくべき大切なこと

更新日:5 日前

AIを利用してもできない就業規則業務【経営者向け】
AIが完全に作成した画像

2025年 就業規則の専門家は不要な時代に入った。私はそう思いました ‐ その理由


AIの進化は凄まじいです。2025年に入り、更にAIが進化しました。


「条文の裏に過去がある。見抜けるのは専門家だけ」

このキャッチコピーを考えたのも、画像を作成したのもAIです。AIの進化は、ここまで来ています。


ここまでくれば、就業規則作成も専門家抜きで、自社で作成できると考えるようになりました。専門家による最終的なチェックは必要ですが、「就業規則作成自体の需要はなくなる」という見解に2025年の春に至りました。


質の高い就業規則の雛型も出回っております。数千円の書籍を買ってくれば、ひな形としては完璧です。少し前から雛型をAIを活用して「一般的な就業規則」を作成することは可能になっていましたが、現在は、AIは広く、しかも、深く深く検索して情報をリサーチしてくれるようになりました。それを元に作成すれば、ある程度複雑な内容のものでも、人間と遜色ないものが出来上がると思ったのです。


しかも、AIは人間と違って面倒なことがありません。打合せのためのスケジュール調整も不要です。意見を押し付けたりしないし、何を聞いても頼んでも追加料金も発生しませんし、ユーザーに忠実です。AIですべて解決するなら、私でもAIで済ませます。


そこで、今後は、就業規則専門の当社労士事務所も、人間関係の問題へシフトしていこうと考えるようになりました。例えば、「役員会議のファシリテーター」などです。人事労務の問題で会社の方向性が決まらない企業は多いです。社員への対応などは意見の分かれるところですよね。また、就業規則の社員説明会や研修・勉強会などを増やしていこうかとも考えていました。上司と部下の1on1ミーティングの設定とか改善とかですね。

AIが進化しても構造上できないことがある‐具体的な事例


しかし、それは、決定的に誤っているということに気づきました。既に、すさまじい進化を遂げているAIですが、どれだけ推論機能が発達しても、誤りを犯さなくなっても、会社の事情を踏まえた就業規則は作成できないと気づいたのです。抽象的な話をしても伝わりにくいと思いますので具体的にご説明します。


AIが進化しても「できないこと」の事例


例えば、御社が自社の就業規則をAIに読んでもらったとします。しかし、その際に、以下のような指摘や質問はAIから出てこないはずです。


御社では休職者が過去に出て問題になったことはないですか?


チャットGPTでもクロードでも就業規則を読んで、このような問題意識をもって質問してくるなんてことはありえません。ここに疑いはないでしょう。


ところが、経験豊富な専門家は「就業規則」を見ただけで、つまり、書類をみただけで、このようなご質問ができます。なぜか、ご説明します。


休職・復職の条文から背景を読み取る


例えば、就業規則全体の条文は簡潔なのに、休職・復職の条文「だけ」詳細かつ完璧であったら、どうでしょうか?


休職者が出て、整備の必要性を感じたという可能性が高いと推測できます。そこだけ詳細なのは不自然からです。


しかし、AIには「休職の部分だけが詳細です。他の部分も充実させましょう」という発言しかできません。「なぜ、休職部分だけが詳細なのか?」という背景に思いを馳せることができないので、「御社では過去に出て問題になったことはないですか?」という質問自体ができないのです。


更に、経験豊富な専門家であれば、就業規則を見れば様々なことに気づきけます。例えば、就業規則がどこの雛形を参考にしたのかを推測できます。ときには、特定できることもあります。


■約7000円の就業規則の書籍から推測できること

仮に、休職の条文が「ある高名な就業規則の専門家」が書いた書籍(価格約7000円)を元に作成されたものだと特定できたとします。その場合、それだけで、私は(まずは)顧問社労士の方(顧問社労士がいないなら、親しい社労士の方)に作成してもらった可能性が高いと推測します。


  • なぜ、市販の書籍を元にしているのに自社で作成したのではないと考えるのか?

  • なぜ、顧問社労士なのか?


不思議かもしれませんが、その理由は明確です。7000円もする書籍を購入したのです。値段を見たらビックリするはずです。そんな高額な書籍を会社が購入したとするなら、休職の部分(1条~2条)だけしか変更しないでしょうか?せっかくなので、解雇などの条文も一緒に変えるはずです。解雇とか退職時の引継ぎとか気になることは他にもあるはずです。


「なぜ、顧問社労士と考えるのか?」についてですが、会社側のお気持ちを考えた推測です。わざわざ休職の1~2条だけを変更するため、新たな専門家を探すのは手間です。顧問社労士に依頼するのが一般的でしょう。顧問社労士がいないなら、お付き合いのある近しい社労士などがいるかもしれません。もし、そういう方以外の専門家に依頼するなら、やはり、ついでに、その他の部分も見てもらう可能性が高いです。


以上のような話は経験が豊富な専門家は一瞬で思うことです。しかし、全て可能性(推測)の話に過ぎません。業種や社員数・会社の設立の経緯や就業規則作成者のご性格などにもよって変わりますので、経営者や人事担当者との会話を通じて修正しながら段々と真の課題を明確にしていきます。


それが、AIにはできないということがわかりました。「AIは行間が読めない」「背景を理解できない」「個別具体的な事情が理解できない」などと言われましたが、構造上AI単独ではできないことが私にもやっと理解できたのです。あくまでも、人間の問い・問題意識が先に必要なのです。


就業規則の作成段階でこそ、経営者の想いや背景が重要


ここまでお話してきた内容は、就業規則を「これから作成する」段階において、特に意味を持ちます。


社長の想いが100%明確だったり、直面している課題が浅いものであれば、AIとのやり取りで作成しても十分なケースはあるでしょう。しかし、根の深い問題や、経営者の中でまだ整理されていない想いがある場合は、AIとのやり取りでは問題が解決しないのです。


そもそも、そうした想いや課題はうまく言語化できないことも多いものです。すべてを話さずとも、少しの会話から背景を汲み取り、言語化して、真の課題をまとめ、解決策として提示できる専門家が必要になってきますよね。


「まさにそれだ」と経営者や人事責任者が思える内容に整理できたとき、それを就業規則という形に落とし込むのです。私は、これを「人事労務の課題解決の設計図」を描き、「就業規則に落とし込む」と常日頃から表現しています。これは、AIには決してできない流れです。


仮にAIと一緒に深い問題が解決できたのだとすれば、それはAIの力というよりも、AIユーザー自身が会社の課題と背景を100%把握していて、自ら解決したというだけのことだと思います。不明確だった想い・課題・背景をAIとの会話を通じて明確にしていくセルフコーチングがもしできるのであれば、今までも専門家を必要としていなかった企業様ではないでしょうか?


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


フェスティナレンテ社会保険労務士事務所

代表・特定社会保険労務士・事業承継士 小嶋裕司


執筆者プロフィール

就業規則専門の社会保険労務士です。就業規則の関連業務で業務全体の99%超を超えますが、提供しているサービスは、就業規則という「書類」ではありません。お客様企業と一緒に人事労務に関する経営課題を解決することです。そのため、課題解決のための「設計図」をお客様と共に描き、それを就業規則という形にしています。「会社の事情」と「法令遵守」の2つを両立させる現実的な就業規則をご提供しています。どちらが欠けても意味がありません。特に、就業規則をすでにお持ちの老舗企業や二代目社長の会社や自由な働き方を認めるベンチャー企業様から多くご依頼をいただいています。また、自社で進めても専門家に相談しても現実的な対応策が見つからなかったというお客様に多いのが特徴です。その証拠に、就業規則の見直し業務に関しては、「顧問社労士・顧問弁護士のいる企業」や「過去に他の専門家へ依頼したことがある企業」が当事務所のお客様企業の7割を占めています。この数値は、当事務所が「既に深い付き合いのある専門家と比較された上で選ばれている」という証だと考えています。








bottom of page