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ChatGPT進化時代の就業規則作成—AIと専門家の違いで経営者が知っておくべき大切なこと

  • 執筆者の写真: 特定社会保険労務士 小嶋裕司
    特定社会保険労務士 小嶋裕司
  • 6月6日
  • 読了時間: 5分

更新日:11月13日

AIを利用してもできない就業規則業務【経営者向け】
AIが完全に作成した画像

2025年 就業規則の専門家は不要な時代に入った。就業規則の専門事務所である私からみてもそう思いました‐ その理由


AIの進化は凄まじいです。2025年に入り、更にAIが進化しました。


「条文の裏に過去がある。見抜けるのは専門家だけ」


このキャッチコピーを考えたのも、画像を作成したのもAIです。プロンプト次第で、AIの進化は、ここまでできるようになっています。皆様も日々実感していることと思います。


ここまでくれば、就業規則作成も専門家抜きで、自社で作成できると考えるようになりました。専門家による最終的なチェックは必要ですが、「就業規則作成自体の需要はなくなる」と、2025年の春に思うようになりました。


「人間関係の問題」以外は不要な時代へ?!


そこで、今後は、就業規則専門の当社労士事務所も、就業規則の運用に伴う人間関係の課題に焦点を当てていこうと考えるようになりました。就業規則は、社員が安心して働くためのルールであり、労働条件を明確に示すものです。そのため、社員説明会や研修・勉強会など、運用段階でのサポートを強化していこうかと考えていました。上司と部下の1on1ミーティングの設計や改善もその一環です。


誤解がないようにお伝えすると、当事務所は業務の99%超を就業規則関連で占める就業規則の専門事務所です。その専門事務所から見ても、いや、専門事務所だからこそ、そう思ったのです。

AIが進化しても構造上できないことがある‐具体的な事例


しかし、それは、決定的に誤っているということに気づきました。既に、すさまじい進化を遂げているAIですが、どれだけ推論機能が発達しても、誤りを犯さなくなっても、就業規則作成段階のレベルにおいても、AIでは絶対に解決できないことが多いと気づいたのです。抽象的な話をしても伝わりにくいと思いますので具体的にご説明します。


AIが進化しても「できないこと」の事例


例えば、御社が自社の就業規則をAIに読んでもらったとします。しかし、その際に、以下のような指摘や質問はAIから出てこないはずです。


御社では過去に社員と退職時のトラブルになったことはないですか?


最先端AIでも就業規則を読んで、このような問題意識をもって質問してくるなんてことはありえません。しかし、経験豊富な専門家は「就業規則」を少し見ただけで、つまり、書類を少しみただけで、このようなご質問が当たり前にできます。なぜか、一例を挙げます。


退職手続の条文から背景を読み取る


例えば、就業規則全体の条文は簡潔なのに、退職手続の条文「だけ」詳細かつ完璧であったら、どうでしょうか?


過去に退職者と揉めた経験があり、「もう二度と、あんな思いをしたくない」という思いが就業規則の条文に表れていると推測できます。そこだけ詳細なのには理由があるからです。このような点は、経験豊富な専門家であれば、すぐに気づくものです。しかし、全て推測(仮説)に過ぎません。そこで、経営者や人事担当者との会話を通じて明確にしていきます。


ところが、AIには「退職の部分だけが詳細です」という判断すらできません。ましてや、「なぜ、退職部分だけが詳細なのか?」という背景に思いを馳せることなどできないのです。したがって、当然、先ほどの質問はできないのです。


「AIは行間が読めない」「背景を理解できない」「個別具体的な事情が理解できない」などと言われますが、構造上AI単独にはできないことが私にもやっと理解できたのです。仮説を立てるという仮説思考ができないのです。あくまでも、人間の問い・問題意識・明確な方針が先に必要なのです。AIは積み上げてきた前提を壊すことができない―この一点だけで、人間の仮説思考とは決定的に異なるのです。


就業規則の作成段階でこそ、経営者の想いや背景が重要


ここまでお話してきたことは、就業規則の作成において、重要な意味を持ちます。


社長の想いが100%明確だったり、直面している課題が浅いものであれば、AIとのやり取りで作成しても十分なケースはあるでしょう。しかし、根の深い問題や、経営者の中でまだ整理されていない想いがある場合はAIとのやり取りでは問題が解決しないことを意味しているからです。


そうした課題や想いはうまく言語化できないことも多いものです。すべてを話さずとも、わずかな会話から背景を汲み取り、言語化して、真の課題をまとめ、解決策として提示できる専門家が必要になってきますよね。


「まさにそれだ」と経営者や人事責任者が思える内容に整理できたとき、それを就業規則という形にするのです。これは、AIには決してできないことです。


仮にAIと一緒に深い問題が解決できたのだとすれば、それはAIの力というよりも、AIユーザー自身が想い・方針・課題が100%明確になっていて、自ら解決したということになるでしょう。不明確だった想い・課題・背景をAIとの会話を通じて明確にしていくセルフコーチングがもしできるのであれば、今までも専門家を必要としていなかった企業様ではないでしょうか?


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


フェスティナレンテ社会保険労務士事務所

代表・特定社会保険労務士・事業承継士 小嶋裕司


執筆者プロフィール

就業規則専門の社会保険労務士です。就業規則の関連業務で業務全体の99%超を超えますが、提供しているサービスは、就業規則という「書類」ではありません。お客様企業と一緒に人事労務に関する経営課題を解決することです。そのため、課題解決のための「設計図」をお客様と共に描き、それを就業規則という形にしています。「会社の事情」と「法令遵守」の2つを両立させる現実的な就業規則をご提供しています。どちらが欠けても意味がありません。特に、就業規則をすでにお持ちの老舗企業や二代目社長の会社や自由な働き方を認めるベンチャー企業様から多くご依頼をいただいています。また、自社で進めても専門家に相談しても現実的な対応策が見つからなかったというお客様に多いのが特徴です。その証拠に、就業規則の見直し業務に関しては、「顧問社労士・顧問弁護士のいる企業」や「過去に他の専門家へ依頼したことがある企業」が当事務所のお客様企業の7割を占めています。この数値は、当事務所が「既に深い付き合いのある専門家と比較された上で選ばれている」という証だと考えています。

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