AIの進化と就業規則の将来
チャットGPT(AI)がどんどん進化しています。このままAIがどんどん進化していくと、自社でほとんどのことが行えるようになりますね。
そんな中、AIが進化した未来で会社が就業規則を社会保険労務士に依頼する意味を考えてみたいと思います。
目次
1.淘汰される就業規則と淘汰されない就業規則
2.チャットGPTの限界
2-1 限界例:相手の立場を踏まえた対応ができない
2-2 現状のAIは自動車のエンジン!行けない場所に行けるツールではない
3.当事務所がAIの進化が大歓迎な理由
4.就業規則無料コンサルティングのご案内
淘汰される就業規則と淘汰されない就業規則
確実に言えることは、雛形を変えただけの就業規則は淘汰されるでしょう。オーダーメイドの就業規則と言っても、専門家であれば誰でも作成できるものであれば同じだと思います。結局、それは、定型化できることであって、AIの最も得意とするところだからです。
もちろん、AIの回答には間違いが含まれています。AIが進化しようとも、人事労務の分野のように複雑で、しかも頻繁に法律が変わる分野は誤った情報が混じることは避けられません。指示文がほんのちょっと違うだけで全く逆の回答が返ってきますしね。
当然、AIは法的な誤りをしても膨大な損害を会社に与える提案をしても一才責任をとってくれません。労働基準監督署の是正勧告を受けたり、膨大な未払い残業代を請求されたりしないよう、将来的にも、最終的に人間のチェックは必要でしょう。
しかし、人間のチェック以外の部分で、『基本的な就業規則の作成・見直し』なら専門家に依頼する意味がなくなるのも近い将来の話だと思います。
ただ、やはり、複雑な就業規則の作成業務はAIが進化しようとも残り続けます。それは間違いないと断言できます。なぜかをお話します。
チャットGPTの限界
チャットGPTをはじめとしたAIには限界があります。複雑な人事労務の問題はAIの限界を超えているからです。具体的な例を挙げてご説明します。
限界例:相手の立場を踏まえた対応ができない
複雑な問題は ご相談者の置かれている個別の状況に対応しなければなりません。お客様が求めているのは一般論ではなく、「自社がどうしたら良いのか?」という現実的な施策です。ご相談者の置かれている状況によってとるべき施策は変わってきますが、これがAIとは相性が良くありません。
人件費の問題で考えてみます!
例えば、就業規則が扱う 賃金、退職金、残業代等の人件費の問題で考えます。なお、念のため申し上げますが、これらは就業規則(賃金規程等を含みます)に記載する事項ですよ。
こういった問題は、労働基準法等の法律の規制があります。これを満たすことが絶対条件です。また、今ある制度を変更する際には、労働条件の不利益変更の問題も生じます。
その一方で、会社にも人件費の制約や人手(不足)などの事情があります。それらを無視した施策はとることができません。当然、これらも考慮しなければなりません。
また、作成・変更した後も問題です。賃金などに手を加えれば、社員への説明も必要になります。同意が必要になるケースもあります。しかし、それは、社員との関係性で全く事情が異なってきます。会社の方針に反発が予想されるケースとそうではないケースでは異なる対策が必要です。反発も本当に一部なのか、全体なのかでも進め方が全く異なってきます。
誤解されている方が多いようですが、これらを踏まえた内容にするのが就業規則です。
しかし、チャットGPTをはじめとしたAIは、そういった個別の事情を考慮した上で結論を出すことが苦手です。複数の軸を設定すると(複雑になればなるほど)、納得がいかない解答が返ってきます。
例えば、「法律的には正しくても実行不可能な施策」や「実行は可能でも法的には問題な施策」が返ってきたりします。どちらも意味がありません。
それは、指示文が悪いのではなくAIの限界を超えている相談内容なのです。
現状のAIは自動車のエンジン!行けない場所に行けるツールではない
私がAIを活用し続けわかったことがあります。AIを活用すると業務が効率化します。今まで10時間かけていたことが3分で終わることさえありますが、AIは自動車のエンジンみたいなものであって、ワープできるツールではないということです。
一部の分野(画像生成や音声認識など)ではAIが人間の能力を超えるところへ連れて行ってくれますが、人事労務の問題の活用に限っては、今までできなかったことができるようになるツールではありません。
一見すると、自分の能力を超えた「知識の提供」や「資料のまとめ」や「文章作成」もできているように思えるかもしれません。しかし、多くの誤りが含まれる中で、その内容が正しいか(適切か)を正確に判断できるということは、自分の能力の範囲内であるということです。時間をかければ(今までも)到達できた場所のはずです。
ときに、AIを活用し、今まで「できなかったこと」ができるようになることもあるでしょう。しかし、それは、人間自身が成長したということです。成長を加速化させる効果が有ることは間違いありませんが、それは、「自分が到達可能であった場所へ行けた」ということに過ぎません。
当事務所がAIの進化が大歓迎な理由
しかし、経験豊富な専門家ならAIの限界を超えた問題に対しても対応が可能です。いくつもの条件が出されても、ご相談者の置かれている状況やお考えを伺い、お話を整理してお客様の納得がいく解決策の提案ができます。
もちろん、このような複雑な問題への対応が専門家であれば誰でもできるわけではないでしょうが、当事務所に関しては、元々、他の専門家に相談しても納得がいかなかったという複雑な事情を抱えたお客様が中心です。
特に、ホームページを観てお仕事のご依頼をくださった方に顕著な傾向です。
その証拠に、就業規則の見直し業務に関しては顧問社労士や顧問弁護士がいるのに就業規則をうちに依頼してくださった会社、過去に他の専門家に就業規則を作成してもらった会社の合計がお客様全体の68%を占めています。
ですから、AIが進化していくことで、単純作業がどんどん減っていき、付加価値の高い業務に時間と労力を費やすことができるようになります。当事務所にしかできない業務に専念できるようになります。そんなワクワクする世界になりました。チャットGPTに限らずAIの進化は大歓迎です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者
特定社会保険労務士 小嶋裕司
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