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就業規則をチャットGPT(AI)が進化した世界で社会保険労務士に依頼する意味

更新日:11月11日



AIの進化と就業規則の将来


チャットGPT(AI)がどんどん進化しています。このままAIがどんどん進化していくと、自社でほとんどのことが行えるようになりますね。


そんな中、AIが進化した未来で会社が就業規則を社会保険労務士に依頼する意味を考えてみたいと思います。


1.淘汰される就業規則と淘汰されない就業規則


1-1 人間(専門家)のチェックは今もこれからも必要

まず、AIの活用をするに際して、確認していただきたいことがあります。それは、AIが作成した就業規則には人間(専門家)のチェックが必要であるということです。


なぜなら、現在のAIの回答には多くの誤りが含まれているからです。そして、AIが進化しようとも、就業規則が扱う人事労務のように複雑な分野では、誤った情報が混じることは避けられません。以下は、その理由の一例です。


  • そもそも、適切な質問にすること自体が非常に難しい(何と言って聴いて良いのかわからない)

  • しかも、指示文がほんの少し違うだけで全く逆の回答が返ってくる

  • 毎年のように法律が変わる。「今年は正しくても、来年には誤りになる」ということが起きうる


しかも、就業規則の扱う分野での誤りは、会社へ甚大な被害を及ぼすことがあるということです。例えば、労働基準監督署からの是正勧告を受けたり、膨大な未払い残業代を請求されたりするケースが典型例です。当然、AIは会社が法的責任を問われても、膨大な損害を被っても、一才責任をとってくれませんAIの回答には当たり前のように誤りが含まれ、その全責任は会社が負うことになります。したがって、AIの提案をそのまま採用はできず、将来的にも、人間のチェックは必要です。


その際、社内でAIの提案の適否(正しいか否か)を判断可能なスペシャリストがいないのであれば、社会保険労務士などの専門家のチェックは必要不可欠でしょう。


1-2 ひな型をアレンジしただけの就業規則は不要になる


しかし、就業規則のチェック以外の部分で、『基本的な就業規則の作成・見直し』なら専門家に依頼する意味がなくなるのも近い将来の話だと思います。少なくても、雛形を少し変えただけの就業規則の作成は淘汰されるでしょう。オーダーメイドの就業規則と言っても、専門家であれば誰でも作成できるものであれば同じだと思います。結局、それは、定型化できることであって、AIの最も得意とするところだからです。


しかし、それでも、やはり、複雑な就業規則(会社の事情を踏まえた就業規則)の作成業務はAIが進化しようとも残り続けます。それは間違いないと断言できます。なぜかをお話します。


2.チャットGPTの限界


チャットGPTをはじめとしたAIには限界があります。AIに就業規則を作成してもらおうとしても、複雑な内容は適していません。具体的な例を挙げてご説明します。


2-1 限界例:相手の立場を踏まえた対応ができない


複雑な問題は ご相談者の置かれている個別の状況に対応しなければなりません。お客様が求めているのは一般論ではなく、「自社がどうしたら良いのか?」という現実的な施策です。ご相談者の置かれている状況によってとるべき施策は変わってきますが、これがAIとは相性が良くありません。


人件費の問題で考えてみます

例えば、就業規則が扱う 賃金、退職金、残業代等の人件費の問題で考えます。なお、念のため申し上げますが、これらは就業規則(賃金規程等を含みます)に記載する事項ですよ。


こういった問題は、労働基準法等の法律の規制があります。これを満たすことが絶対条件です。また、今ある制度を変更する際には、労働条件の不利益変更の問題も生じます。


その一方で、会社にも人件費の制約や人手(不足)などの事情があります。それらを無視した施策はとることができません。当然、これらも考慮しなければなりません。


また、作成・変更した後も問題です。賃金などに手を加えれば、社員への説明も必要になります。同意が必要になるケースもあります。しかし、それは、社員との関係性で全く事情が異なってきます。会社の方針に反発が予想されるケースとそうではないケースでは異なる対策が必要です。反発も本当に一部なのか、全体なのかでも進め方が全く異なってきます。


これらを踏まえた内容にするのが就業規則の業務です。紙の書類だけを作成しても意味がありません。


しかし、チャットGPTをはじめとしたAIは、そういった個別の事情を考慮した上で結論を出すことが苦手です。複数の軸を設定すると(複雑になればなるほど)、納得がいかない解答が返ってきます


例えば、以下のような回答が返ってきます。

  • 法律的には正しくても会社が実行不可能な内容

  • 実行は可能でも法的には問題のある内容


どちらも意味がありません。両方を満たして初めて意味があるのです。それは、指示文が悪いのではなくAIの限界を超えている相談内容なのです。


2-2 現状のAIは自動車のエンジン!行けない場所に行けるツールではない


私がAIを活用し続けわかったことがあります。AIを活用すると業務が効率化します。今まで10時間かけていたことが3分で終わることさえありますが、AIは自動車のエンジンみたいなものであって、ワープできるツールではないということです。


一部の分野(画像生成や音声認識など)ではAIが人間の能力を超えるところへ連れて行ってくれますが、人事労務の問題の活用に限っては、今までできなかったことができるようになるツールではありません


一見すると、自分の能力を超えた「知識の提供」や「資料のまとめ」や「文章作成」もできているように思えるかもしれません。しかし、多くの誤りが含まれる中で、その内容が正しいか(適切か)を正確に判断できるということは、自分の能力の範囲内であるということです。時間をかければ(今までも)到達できた場所のはずです


ときに、AIを活用し、今まで「できなかったこと」ができるようになることもあるでしょう。しかし、それは、人間自身が成長したということです。成長を加速化させる効果が有ることは間違いありませんが、それは、「自分が到達可能であった場所へ行けた」ということに過ぎません。


2-3「AIの限界を超えた業務でも専門家にチェックだけしてもらえば良いのでは?」という疑問に対する回答


しかし、ここまでお読みいただいた方は、『大きな疑問』をお感じになったのではないでしょうか?


「複雑な就業規則の業務だって、自社で作成して専門家にチェックしてもらえば良いのではないか?」「結局、専門家の役割はチェックだけになるのでは?」という疑問です。


確かに、この疑問は自然に湧き上がってくると思います。しかし、この疑問に対しては、「そうはならない」とハッキリと言えます。


なぜなら、専門家のチェックの結果、就業規則に問題があれば、結局、一から作り直しになるからです。そうなると、就業規則作成(見直し)に自社で費やした時間が全くの無駄になります。そのようなリスクを考えたら、複雑な就業規則の作成業務は最初から専門家に依頼した方が費用対効果の点で優れています


AIも活用し社内で色々と検討したうえで作成した就業規則が一から作り直しになったときのショックはかりしれません。


自社で行ったとしても、そのお時間は無料ではないのです。人件費が発生しています。無駄なリソースを割いている余裕がある企業はないはずです。


2-4 複雑な就業規則(会社の実情を踏まえた就業規則)に専門家の関与が必須な理由のまとめ


簡単な就業規則は以下の流れで問題なく作成できるでしょう。

  1. AIに情報を提供して叩き台を作成してもらう

  2. 自社で内容をチェック・修正する

  3. 出来上がった就業規則案に問題がないか専門家のチェックを経る


しかし、複雑な就業規則、つまり、会社の実情を踏まえた就業規則を上記の流れで作成すると、以下のようになり混乱の極みになります


  1. AIに情報を提供して叩き台を作成してもらう

  2. しかし、中々、「法律の要件」と「自社の事情」の両方を満たした就業規則案が出てこなくて、膨大な時間を費やす

  3. 何とか自社で就業規則案を作成し終える

  4. 就業規則案に問題がないか専門家にチェックを依頼する

  5. 方向性自体が間違えていたことに気づき、作り直しになる(場合によっては一から)


AIを活用したケースでなくても、上記のようなケースは頻繁に生じます。しかし、AIは誤りを含んだ多くの情報を提供してくるため、法律の細かい知識なしに情報を鵜呑みにすると、混乱の極みに至ります。


多くの場合、複雑な問題は「社員の皆さんの労働条件」の問題でしょう。当然、会社経営に直結しますので、会社としても安易な妥協ができないはずです。もし、方向性が違っていたなら、一からでも作り直さずにはいられない分野だと思われますが、いかがでしょうか?


AIの活用だけでは解決できない複雑な業務には、やはり、「素案の作成段階」から専門家が必要不可欠です。


3.当事務所がAIの進化が大歓迎な理由


今まで、AIの限界についてお話をさ生活はて頂きました。しかし、経験豊富な専門家ならAIの限界を超えた問題に対しても対応が可能です。いくつもの条件が出されても、ご相談者の置かれている状況やお考えを伺い、お話を整理してお客様の納得がいく解決策の提案ができます。


もちろん、このような複雑な問題への対応が専門家であれば誰でもできるわけではないでしょうが、当事務所に関しては、元々、他の専門家に相談しても納得がいかなかったという複雑な事情を抱えたお客様が中心です。


特に、ホームページを観てお仕事のご依頼をくださった方に顕著な傾向です。


その証拠に、就業規則の見直し業務に関しては顧問社労士や顧問弁護士がいるのに就業規則をうちに依頼してくださった会社、過去に他の専門家に就業規則を作成してもらった会社の合計がお客様全体の68%を占めています。


ですから、AIが進化していくことで、単純作業がどんどん減っていき、付加価値の高い業務に時間と労力を費やすことができるようになります。当事務所にしかできない業務に専念できるようになります。そんなワクワクする世界になりました。チャットGPTに限らずAIの進化は大歓迎です。


4.就業規則無料コンサルティングのご案内


もし、現在、御社がAIツールを活用して就業規則の整備を試みていて、どこかで行き詰まっているのであれば当事務所の無料コンサルティングをご利用ください。


当事務所と一緒に、御社に最適な解決策を探しませんか?1日ではありますが、お時間の制限はなく、無料でコンサルティングを行っています。30分でも3時間でも御社次第です。詳細は、以下のボタンをクリックして、ご確認ください。



最後までお読みいただきありがとうございました。


執筆者

特定社会保険労務士 小嶋裕司


執筆者プロフィール

就業規則とその関連業務に特化した特定社会保険労務士。業務の99%以上が就業規則に関するものであり、あらゆる就業規則業務の経験を持つ。その専門性から、代表が所属する団体では、人事労務問題の「駆け込み寺」と呼ばれている。


多数の利害関係者の調整が必要な業務、複雑な案件、長期にわたるプロジェクトなど、高度な専門性が求められる業務を多数手がけてきた。特に、就業規則の見直し業務においては、顧問社労士や顧問弁護士がいるにもかかわらず当事務所に依頼する企業や、過去に他の専門家に依頼していた企業が全体の68%を占めており、就業規則関連に特化した専門性が高く評価されている。


高い専門性が認められた主な実績(全て代表自身が直接手がけた業務:

  • 東証プライム上場企業の就業規則見直し

  • グローバル企業(東証プライム上場企業)のグループ企業の就業規則全面改訂(取締役会・親会社の承認を得て施行した複数年に及ぶプロジェクト)

  • M&A前の労務・残業代コンサルティング

  • 上場を果たした企業の社内制度全面整備(1年弱に及ぶプロジェクト)

※全て代表個人が請け負った業務である。



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