就業規則をチャットGPT(AI)が進化した世界で社会保険労務士に依頼する意味
- 特定社会保険労務士 小嶋裕司

- 2023年3月20日
- 読了時間: 11分
更新日:2 日前

【2026年最新版のお知らせ】この記事は2023年3月時点でのAIと就業規則専門家の関係についての内容です。2025年に入り、AIがさらに進化したため、現在は、より具体的で実践的な視点から専門家の価値を検証した最新記事を公開しました。最新版の記事では、「今のままのAIの進化の延長線上」では、AIがどれだけ進化しても絶対に埋まらない最後のピース(決してできない就業規則業務)を解説しています。
この記事の内容は、現在(2026年1月1日)のAIでは「通常できない業務(AI時代の就業規則の専門家の役割)」について解説しています。
以下の最新版の記事とあわせてお読みいただくことで、AI時代における専門家の価値についてより深くご理解いただけると考えています。
AIの進化と就業規則の将来
チャットGPT(AI)がどんどん進化しています。このままAIがどんどん進化していくと、自社でほとんどのことが行えるようになりますね。
そんな中、AIが進化した未来で会社が就業規則を社会保険労務士に依頼する意味を考えてみたいと思います。
1.淘汰される就業規則と淘汰されない就業規則
1-1 人間(専門家)のチェックは今もこれからも必要
まず、AIの活用をするに際して、前提として、ご確認していただきたいことがあります。それは、今もこれからも、AIが作成した就業規則には人間(専門家)のチェックが必ず必要であるということです。
なぜなら、現在のAIの回答には多くの誤りが含まれているからです。AIの進化により、基本的な知識の正確性は以前より向上しています。また、正確性を期すための施策・方法もあります。しかし、それでも、就業規則が扱う人事労務のような複雑な分野では、誤った情報が混じることは避けられません。以下は、その理由の一例です。
■人間のチェックが必ず必要である理由
そもそも、適切な質問をすること自体が非常に難しい(何と言って聞いて良いのかわからない)
指示文が少し違うだけで全く逆の回答が返ってくる。例えば、たった一つの条件が欠けていただけで、結論が全く逆になる。
毎年のように法律が変わる。「去年は正しくても、今年は誤りになる」ということが頻繁に起きる。AIは情報発信者の日付を見て正誤を判断することができない。したがって、インターネット上の情報を元にしているか限りにおいては、AIが提示する内容には誤りが含まれることは避けられない。
しかも、就業規則の扱う分野での誤りは、会社へ甚大な被害を及ぼすことがあります。Googleも医療や法律の分野の情報は「誰が書いた記事か?(執筆者の専門性)」を重視していますが、それは誤った内容は検索者に深刻な影響を及ぼすからです。
例えば、労働基準監督署からの是正勧告を受けたり、膨大な未払い残業代を請求されたりするケースが典型例です。当然、AIは会社が法的責任を問われても、会社が膨大な損害を被っても、一才責任をとってくれません。その全責任は経営者が負うことになりますので、AIの提案をそのまま採用はできず、将来的にも、人間のチェックは必要です。
その際、社内でAIの提案の適否(正しいか否か)を判断可能なスペシャリストがいないのであれば、社会保険労務士や弁護士などの専門家のチェックは必要不可欠でしょう。
なお、AIの精度を高めるために公的な資料だけを読み込ませる方法も考えられますが、多くの中小企業が自前で行うのは現実的ではなく、結局は有料サービスや専門家が必要になる場面が多いと感じています。
なお、顧問契約などを結ばなくても、就業規則を自社で作成して、その内容を専門家にチェックしてもらう「就業規則チェックサービス」を利用するという方法もあります。当事務所でもご提供しており、以下の記事では「AIを使って、自社で作成した就業規則をチェックしてもらう際の料金」についてご説明しています。ご参考までにお読み下さい。
「就業規則+ひな型」で就業規則を作成したけど不安が残る方へ~チェックサービス(5.5万円)」
1-2 ひな型をアレンジしただけの就業規則は不要になる
しかし、就業規則のチェック以外の部分で、『基本的な就業規則の作成・見直し』なら専門家に依頼する意味がなくなるのも近い将来の話だと思います。少なくても、雛形を少し変えただけの就業規則の作成は淘汰されるでしょう。
オーダーメイドの就業規則と言っても、専門家であれば誰でも作成できるものであれば同じだと思います。結局、それは、定型化(一般化)できることであって、AIの得意とするところだからです。
しかし、それでも、「会社の事情を踏まえた就業規則」の作成業務はAIが進化しようとも残り続けます。それは間違いないと断言できます。なぜかをお話します。
2.チャットGPT(生成AI)の限界
チャットGPTをはじめとしたAIには限界があります。しかし、最新のAIなら「会社の事情を踏まえた就業規則」の作成もできるのでは?」と疑問に思った方もいらっしゃると思います。そこで、具体例を挙げてご説明します。
2-1 限界例:人件費の問題で考えてみます
「会社ごとの事情が絡む問題」について、お客様が求めているのは一般論ではなく、「自社がどうしたら良いのか?」という現実的な施策です。ご相談者の置かれている状況によってとるべき施策は変わってきますが、これがAIとは相性が良くありません。
例えば、就業規則が扱う 賃金、退職金、残業代等の人件費の問題で考えます。なお、念のため申し上げますが、これらは就業規則(賃金規程等を含みます)に記載する事項ですよ。
こういった問題は、労働基準法等の法律の規制があります。これを満たすことが絶対条件です。また、現在の制度を変更する際には、労働条件の不利益変更の問題も生じます。つまり、法律が絡みます。
その一方で、会社にも人件費の制約や人手(不足)などの事情があります。それらを無視した方法はとることができません。当然、これらも考慮しなければなりません。
また、作成・変更した後も問題です。賃金などに手を加えれば、社員への説明も必要になります。同意が必要になるケースもあります。しかし、それは、会社と社員の関係性で全く対応策が違ってきます。例えば、会社の方針に反発が予想されるケースとそうではないケースでは異なる対策が必要です。反発も本当に一部なのか、全体なのかでも進め方が全く異なってきます。
法令遵守
人件費の問題
人手不足の問題
社員との関係性
業界の特殊性、会社の業務の内容
どれか1つではなく、全てを満たさないといけないのです。これらの事情は「矛盾・対立」することすらあります。チャットGPTをはじめとしたAIは、そういった個別の事情を調和させることが非常に苦手です。一見すると、矛盾・対立することを調和させようとしているのですから当然です。納得がいかない解答が返ってきます。
例えば、以下のような回答が返ってきます。
法律的には正しくても会社が実行不可能な内容
実行は可能でも法的には問題のある内容
どちらも意味がありません。両方を満たして初めて意味があります。それは、指示文が悪いのではなくAIの限界を超えている相談内容なのです。
しかし、経験豊富な専門家であれば、一見すると、矛盾・対立することを調和させた内容にすることが可能です。当事務所がどのようにして、それを可能にしているのか、その仕組みをお知りになりたい方は「就業規則の作成・見直しページ」の以下のパートをお読みください。仕組みがご理解いただけると思います。
2-2 AIの限界を超えた業務も、専門家のチェックだけで良いのでは?
しかし、ここまでお読みいただいた方は、『大きな疑問』をお感じになったのではないでしょうか?
「会社の事情を踏まえた就業規則だって、自社で作成して専門家にチェックしてもらえば良いのではないか?」「結局、専門家の役割はチェックだけになるのではないか?」という疑問です。
確かに、この疑問は自然に湧き上がってくると思います。しかし、この疑問に対しては、私なりに「そうはならない」という思いがあります。
なぜなら、専門家のチェックの結果、もし、就業規則に問題があれば、結局、一から作り直しになる場合が少なくないからです。特に、「働き方」や「賃金(人件費)」の問題に関しては、問題があった場合、全体に及ぶため骨格からの作り直しになりがちです。
そうなると、就業規則作成(見直し)に自社で費やした時間が実質的に無駄になってしまいます。そのようなリスクを考えると、最初から専門家に依頼した方が、費用対効果の点で良いと考える会社様が多いのではないかと思われます。
2-3 まとめ ― チャットGPT(生成AI)の限界と専門家の関与の変化
簡単な就業規則は以下の流れで問題なく作成できるでしょう。
AIに情報を提供して叩き台を作成してもらう
自社で内容をチェック・修正する
出来上がった就業規則案に問題がないか専門家のチェックを経る
しかし、会社の実情を踏まえた就業規則を同じ手順で進めると、方向性のズレが後から発覚して作り直しになるリスクが高いです。特に、「社員の皆さんの労働条件(働き方や人件費)の問題」は、会社経営に直結しますので、会社としても安易な妥協ができないはずです。もし、方向性が違っていたなら、一からでも作り直さずにはいられない分野だと思われますが、いかがでしょうか?
「会社の事情を踏まえた就業規則」の作成業務は、AIが進化しても専門家の関与が求められると思われます。
■ AI時代に求められる専門家の関与の変化
しかし、企業が専門家に求めることは変わっていくと思います。専門家に就業規則作成の完全代行を頼むケースだけではなく、「自社で終章規則を作成する際のサポート」など様々な形態が増えていき、専門家としても、柔軟に対応する必要があると考えています。
実際、当事務所でも、就業規則を自社で(AIを使って)作成する際のサポートサービスをご提供しています。詳細は「自社で就業規則を作成する際のサポートサービス」ページをお読み下さい。
3.当事務所がAIの進化が大歓迎な理由
経験豊富な専門家ならAIの限界を超えた問題に対しても対応が可能です。いくつもの条件が出されても、ご相談者の置かれている状況やお考えを伺い、お話を整理してお客様の納得がいく解決策の提案ができます。
もちろん、専門家であれば誰でもできるわけではないでしょうが、当事務所に関しては、元々、他の専門家に相談しても納得がいかなかったなどのご事情を抱えたお客様が中心です。この傾向は、ホームページをご覧になってご依頼くださった会社様に特に顕著です。
その証拠に、就業規則の見直し業務に関しては顧問社労士や顧問弁護士がいるのに就業規則をうちに依頼してくださった会社、過去に他の専門家に就業規則を作成してもらった会社の合計がお客様全体の約70%を占めています。
ですから、AIが進化していくことで、単純作業がどんどん減っていき、付加価値の高い業務に時間と労力を費やすことができるようになります。当事務所にしかできない業務に専念できるようになります。そんなワクワクする世界になりました。チャットGPTに限らずAIの進化は大歓迎です。
4.AIを使って自社で完結するのが難しいと感じた会社様へ(無料相談のご案内)
AIを使って自社で進めたけれど、全てを完結するのが難しいとお感じになったのなら、当事務所の無料相談をご利用ください。当事務所は、就業規則関連の専門事務所(人事労務問題解決コンサルティング事務所)ですので、お役に立てると考えています。
当事務所には、「AIを使って自社で進めたけれど、全てを完結するのは難しい」とお感じになった会社様が多くお越しになります。特に、「社員の労働条件(賃金、労働時間、休日など)」や「問題社員対応」に関しては、AIを活用して対策しにくいと仰る会社様が多いですが、当事務所の専門分野です。御社のご事情を丁寧に伺い、就業規則を見ながら、その場で、行うべきことの方針が定まるまでご相談に応じます。
なお、一切の営業行為をすることはございません。完全に無料ですが、どなたでもお受けできるわけではありません。その点はご了承ください。無料相談の詳細は「就業規則 無料相談ページ」をご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司
執筆者プロフィール
就業規則とその関連業務に特化した特定社会保険労務士。業務の99%以上が就業規則に関するものであり、あらゆる就業規則業務の経験を持つ。多数の利害関係者の調整が必要な業務、複雑な案件、長期にわたるプロジェクトなど、高度な専門性が求められる業務を多数手がけてきた。特に、就業規則の見直し業務においては、顧問社労士や顧問弁護士がいるにもかかわらず当事務所に依頼する企業や、過去に他の専門家に依頼していた企業が全体の70%を占めており、就業規則関連に特化した専門性が高く評価されている。
高い専門性が認められた主な実績(全て代表自身が直接手がけた業務:
東証プライム上場企業の就業規則見直し
グローバル企業(東証プライム上場企業)のグループ企業の就業規則全面改訂(取締役会・親会社の承認を得て施行した複数年に及ぶプロジェクト)
M&A前の労務・残業代コンサルティング
上場を果たした企業の社内制度全面整備(1年弱に及ぶプロジェクト)


