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【相談事例】最低賃金上昇の対応策 就業規則の見直し

更新日:11月25日



最低賃金上昇で頭を抱える経営者(就業規則の見直し)

1.最低賃金の急上昇で悩む企業の傾向


近年、最低賃金が大きく上がりました。東京の最低賃金は2014年には888円で、900円を下回ってました。それが、令和に入り1000円を超えました。2024年10月には1163円になりました。この10年で275円上がり、フルタイムで働いていた場合、月額で46,500円(月170時間で計算)の最低賃金が上がったことになります。最近は、物価の高騰もあり、更に上がっていくものと思われます。このまま行けば来年には1200円を超えそうです。


しかし、「急激に最低賃金が上がったため、補助的な業務を行っていた一部の社員の賃金が最低賃金を下回りそう」という会社も多くなってきています。


最近、起業したばかりのベンチャー企業では、その様な問題は少ないでしょうが、創業何十年も経った老舗企業では、多い悩みです。特に、社員の皆さんの満足度が高く、社員の出入りが少ない企業で起きやすい問題だと思われます。


離職率が激しく、常に新しい人材を募集している企業では最低賃金に敏感なはずです。しかし、社員の皆さんも満足していて中々人が辞めない企業、その中でも、残業がほとんどない企業では、気づいたら最低賃金を下回りそうというケースが出てきます。


しかし、物価が上がれば資材・原材料・光熱水費等もあがります。売上も変わらず、いや、むしろ、売上が下がっている会社も多いでしょう。物価高で消費者の生活も苦しくなっているからです。原価も上がり、売上も上がらない(下がっている)となると、会社も苦しく人件費総額は変えられないケースが多いでしょう。


しかも、特定の社員の賃金が最低賃金を下回りそうになったからといって、その社員の賃金額だけを上げるわけにもゆきません。バランスを考えると賃金を上げるなら他の社員も含めて賃金をあげざるを得ません。


また、このような厳しい状況下にあっても、人手不足の問題もあり雇用は維持しないといけないでしょう。そもそも、ここで、人員整理を考えるのは本末転倒ですよね。


  • 売り上げは上がってない

  • 資材等の原価や光熱水費は上がってる

  • 最低賃金は守らないといけない

  • 人件費総額は変えられない

  • 雇用は維持しないといけない


こうなると、最低賃金の問題をどう解決して良いかわからないという企業も出てきますよね。これらを全て満たすにはどうしたら良いでしょうか?しかも、毎年、最低賃金が上がっていくことを前提に考えた場合、小手先の対策ではなく、抜本的な対策が必要です。


そして、私はこの記事で述べる方法が唯一の抜本的な対応策だと考えています。


2.物価高の中での最低賃金の上昇の解決策(対応策)


このような問題を抱えている場合、労働時間を減らすしかありません。労働時間を減らすと言っても、2通りあります。


  • 残業時間ではなく、所定労働時間自体を減らす。結果的に時給単価が上がります。

  • 時給単価を上げて残業時間を減らす。


どちらが良いかは会社の事情によりますが、最低賃金を下回りそうな社員は補助的な業務を行なっている方が多いと思います。残業も少ないでしょう。そうなると、自ずから、どちらになるかは決まってくると思われます。いずれにせよ、労働時間を減らすことが王道の解決策であることは間違いありません。


3.労働時間を減らす2つの方法


しかし、最低賃金が下回りそうな方の労働時間を減らしても、他の社員に仕事を振り分けるのでは意味がありません。他の社員の残業代が増えるだけです。


そうなると、会社全体の(トータルの)労働時間を減らすことが必要になります。その際の手法として主に2つあります。


  1. 業務効率化

  2. 法律上の労働時間(残業)削減の仕組みの導入


ただし、それぞれには違いがあります。以下で、分けけて解説します。


3-1.業務効率化


無駄な業務がないか、今までの業務を見直すのが最もシンプルで効果があります。しかし、それができずに困っている企業が多いでしょう。そもそも、補助的な業務を行っている社員の皆さんは必要不可欠な仕事しか行っていないケースも多いからです。そこで、DX(デジタルオートメーション)化やAIの導入などを進めるのが有効になってきます。


DX化により、人間が行っていた業務を減らすことで労働時間を削減しますが、本格的な導入にはお金がかかります。そのようなことに高額な投資を行うぐらいなら、社員の方の賃金を上げてあげた方が良いと個人的には思います。あくまでも、多額の投資を行い最新技術の導入を図るのは人手不足の解消のためであって、このようなケースで導入するものではないと思われますが、いかがでしょうか?


ただ、高額な投資をしなくてもできるところから導入してはいかがでしょうか?AIの活用も同様です。


3-2.法律上の労働時間削減の仕組みの導入


しかし、金銭的な問題を抜きにしても、様々な事情でDX(デジタルオートメーション)化も、AIの導入も難しいというのが現実かもしれません。あれだけDX化の必要性が説かれても、中小企業では(とりわけ、老舗企業では)、中々普及しませんでした。


AIも同様で、一気に導入するのは危険ですよね。生成AIとはどのようなものかを学んで補助的に使うのが現時点では現実的な選択だというご意見も多いです。そのご意見には一理あります。


その様な場合には、業務効率化以外の労働時間削減の仕組みを導入を検討する必要が出てきます。労働基準法も労働時間削減の仕組みを用意しています。それらを導入することで労働時間を減らすことが可能になります。


■労働時間削減の仕組みの具体例(変形労働時間制)


1つだけ具体例を挙げると、変形労働時間制という制度があります。変形労働時間制とは、柔軟な始業・終業時刻を認めることで労働時間を削減する制度です。この制度の導入で多くの企業では労働時間の削減が可能になります。


フレックスタイム制などが有名ですが、導入企業の割合では「1か月単位の変形労働時間制」「1年単位に変形労働時間制」の方が圧倒的に多いです。


変形労働時間制では労働時間が減らない?!

先日、「変形労働時間制を導入していますが、それほど、労働時間は減りませんでしたよ」と仰られた企業様がありました。


お話を丁寧に伺ったところ、「完全週休二日制が困難なので導入した制度(法定労働時間をクリアするために導入した制度」になっていたからです。導入目的が違っていたのです。


「変形労働時間制を導入すれば労働時間は減る」と言っても、制度の理解と経験が必要です。誰が行っても同じなんてことはありません


DX化やAIの活用で労働時間が減る(人手不足が解消される)と言っても、導入者の設計によって違いが出てきますよね。それと同じことだとお考えください。


3-3.定額残業代の見直しには極めて慎重な対応が必要


労働法に詳しい会社様からは、定額残業代を見直す方法について聞かれます。最低賃金が上がったことにより定額残業代を減らし本来の基本給の額を増やす方法です。


例えば、基本給に30時間分の残業代を含んでいたケースで、基本給に含む部分を20時間とすることで、本来の基本給部分を増やし最低賃金を上げる方法です。


この方法は、一見すると、先ほどの労働時間を減らす方法に近いように思われるかもしれませんが、大きく異なり慎重な対応が必要です。そもそも最低賃金というセンシティブな問題なのです。更に、定額残業代の見直しという慎重な検討が必要な方法をとるなら、そのリスクを充分に理解した労働法に詳しい専門家にご相談することを強く推奨します。


4.労働時間に関する事項は就業規則に記載することが必要


労働時間に関する何らかの仕組み(制度)を導入すると、始業終業時刻、休憩、残業のなどのルールを変更したり決めたりする必要が出てきます。したがって、就業規則の見直しが必要になります。


DX化やAIの導入で業務効率化で労働時間を減らすのなら就業規則の変更は不要に思われるかもしれませんが、利用に関してルール化は必須です。したがって、いずれにせよ、何らかの制度を導入した場合には就業規則の整備が必要になります。


最後には就業規則を変更する必要が出てきますので、就業規則の見直しを忘れずに行ってください。


5.賃金の問題でお悩みなら当事務所の無料相談をご利用ください


当事務所では無料相談を行っております。1日、お時間に制限はありません。賃金の問題は、法律が絡み、中々、自社で解決が難しい問題です。そのうえ、対応を誤ると労使のトラブルに発展するセンシティブな問題です。


そんな重要な問題に対して、初めてお会いした企業様からお話を伺い、アドバイスをするのに、30分程度しかかけないのは失礼です。そのような無料相談ならお受けすべきではないと当事務所では考えています。きちんと、お話を伺って、慎重なお話をさせて頂くためにも、お時間の限定を設けていないのです。


ただし、月3社限定となっています。詳細は以下のページをご覧ください。


執筆者

フェスティナレンテ社会保険労務士事務所

代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司


執筆者プロフィール

就業規則特化の専門家。就業規則の関連業務で99%を超える数少ない社会保険労務士である。年200件超の課題解決実績がある。就業規則の業務を依頼される際に、残業代の問題まで含めると賃金の相談をされないケースはほぼなく、特に賃金規程(賃金制度)に強い社会保険労務士と言える。失敗しない新入社員の賃金設計から、会社の評価と賃金の非一致の解消策、成果主義賃金への以降、手当の導入、最低賃金の上昇に伴う解決策、再雇用者の賃金といった多くの企業が抱える悩みから、他の企業にはない会社独自の課題まで、解決事例は豊富である。M&A前の残業代コンサルティングなど難易度が高い業務経験も多い。






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