今まで適用が猶予されていた時間外労働の上限規制が、2024年の4月から、建設業に適用になりました。そういう経緯もあり、2024年は就業規則の見直しの依頼が続きました。建設業のお客様が特に多い就業規則専門の社労士事務所というのもあると思います。
この記事をお読みの建設業に携わる企業様は、既に現場での対応を終えている企業が多いと思いますが、長時間労働が常態化しやすい建設業界では、この規制にどう適応し続けるか、引き続き不安や悩みを抱えておられる方もいらっしゃると思います。また、対応はしているが、もっと効率化したいとお考えの会社様もあるでしょう。
そこで、本記事では、そのご不安を解消していただくため、当事務所がお客様企業と行ったことについて解説いたします。
建設業の時間外労働の上限規制は難しい?
実は、時間外労働の上限規制は意外にもシンプルです。時間外労働が多い業種の建設業であっても対応はそんなに難しくはありませんでした。
今の時代、建設業であっても100時間に近い時間外労働をしていた会社はほぼなく、時間外労働が80時間を超える月もそんなに多くない会社様が多かったです。
単月で80から90時間の時間外労働が年に半年以内に収まっていたお客様企業がほとんどでしたので、対応は容易でした。月45時間超えの時間外労働が常態化している会社様もありましたが、それも対応は容易でした。
適用猶予がなくなったのちも、法定休日労働と時間外労働を合わせて、月平均80時間(年960時間)まで働いてもらえるのです。しかも、この時間数は休憩を除いた労働時間の話です。そのことさえきちんと整理できていれば、対応は可能です。
ただ、できることなら、日々、意識しなくても自然と時間外労働の上限時間におさまっているのが理想ですよね。そのためには、(法定休日労働を含めた)時間外労働の年間モデルを作成することが必要です。
そこで、当事務所からお客様に重要な一つの提案をさせていただいたうえで、お客様企業には、その年間モデルを作成して(考えて)もらいました。
「時間外労働の上限規制の数値」をみて複雑だと感じる理由
ところで、年間モデルを作成するうえで、時間外労働の上限規制に関しては以下のようにたくさんの数字が出てきます。これがわかりずらいようです。まずは、ご覧ください。
①原則45時間以内・年360時間以内
②特別条項を付けたとしても以下をクリアしないといけない
45時間超の月は年6回まで
時間外労働の年の上限720時間
時間外労働と法定休日の合計が月100時間以内(単月)
時間外労働と法定休日の合計で月80時間以内(2~6か月平均)
確かに、上記の内容だけをみれば複雑に感じると思います。しかし、複雑に感じる理由は明確です。「どれだけの時間を社員に働かせると上限を超えるか」を具体的にイメージができないからです。
つまり、数字の羅列ではイメージが湧かないので、一度、図表にして整理し、上限にかからない年間モデルを作成する必要があります。思った以上にシンプルになります。実際、多くの企業からお話を伺って、当事務所が提案した、年間モデルは数パターンに収まりました。
ご相談いただいた、ほぼ全ての企業で、「これならできそうだ」と仰っていただけました。それぐらいシンプルだということです。
この、「これならできそうだ」と思えることが重要です。最初の段階で、「これは無理だ」と思うプランは実行は困難です。なお、今よりもっと効率化したいとお考えの場合も、年間モデルを作成することが有効です。
当事務所がお客様と進めた流れ
なお、当事務所とお客様企業は、年間モデルの作成について、概ね以下の流れで行いました。ご参考にしてください。
現状の時間外労働・法定休日労働時間数を弊所がお客様からヒアリング
上限規制の内容を整理した資料を弊所が作成・送付してお客様にお読みいただく
同時に、年間モデル2~3パターンを当事務所が作成し図表でご提案する
その中から、実行可能な年間モデルの選択・修正をお客様にしていただく
最後に、建設業に2024年4月1日以降にもある特例措置のご理解をしていただく(特例措置は例外の話ですので、原則の話が先です)。
建設業には2024年4月以降も特例がありますが、特例は、建設業の特性を踏まえて、通常の会社より規制を緩くしたということです。したがって、特例の「内容の理解」で悩むことはあっても、対応に困るということはないと思われます。ですので、最後に行いました。
36協定の締結及び、就業規則への記載
ここで、一つ、注意事項があります。時間外上限規制に対応するためには、新様式での36協定の締結・届出は言うに及ばず、就業規則の改定が必要になるということです。
建設業には2024年4月以降にも特例措置がありますので、「どの様式を使用するか?」など36協定の書き方に意識がいきがちですが、就業規則の整備も必要です。
就業規則には必ず定めなければならない事項があります。また、定めがあるならば「全労働者に適用される事項」は就業規則に記載しなければなりません。
せっかくシミレーションして設計した新制度です。就業規則に定めらければならない事柄(新たに設けた全労働者に適用される事項)が出てくるはずです。就業規則は契約書ですので、有効にするためにも必ず記載しましょう。
建設業の就業規則なら、当事務所の無料相談をご利用ください
当事務所は就業規則関連業務に特化して15年、毎年200件以上の課題解決を重ねてきました。建設業特有の課題はもちろん、会社特有の課題にも数多く対応してきた経験があります。
時間外労働の上限規制も、一見複雑に見える内容ですが、豊富な事例があるため、御社の事情に合わせた現実的な解決策をご提案できます。試行錯誤を最小限にできると思われます。
しかも、当事務所の無料相談は時間は無制限です。リスクなく、納得いくまでじっくりとご相談いただけます。「うちの会社では難しいかも...」というご不安も、実績に基づいた具体的な解決策でお応えします。
※労働時間(残業代)に関するご相談は月3社限定となっております。 まずは気軽に無料相談をご利用ください。
無料相談は以下からお申込ください。
※ 注釈:
ただし、どんなに経験があっても、お客様の状況を深く理解せずに「解決できます」「お役に立てます」とは申し上げられません。だからこそ、当事務所では時間無制限の無料相談を行っています。御社の状況をじっくりと伺い、本当に実現可能な解決策を一緒に見つけていきましょう。
追伸
当事務所は、無料相談を受けただけの方に対して、DMやメルマガの送付なども含め一切の営業行為は行いません。
執筆者
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司
執筆者プロフィール
就業規則特化の専門社労士。業務の99%超を就業規則の関連業務で占めるが、特に、労働時間・残業代の問題に強い。最も多いクライアント企業の業種は建設業で、建設業の労働時間・残業代の問題には精通している。建設業の2024年問題を前に、2023年から2024年にかけての業務の依頼の7割弱が建設業からとなった。また、クライアント企業は老舗企業が多いが、特に、建設業では二代目・三代目社長の会社がお客様のほとんどで、創業社長からのご依頼の場合、事業承継を視野に入れた支援が求められることが特徴となっている。