未払い残業代の計算 事例:社員10名で2000万円弱のケース【会社の残業代対策に強い社労士が解説】
- 特定社会保険労務士 小嶋裕司

- 2023年11月29日
- 読了時間: 8分
更新日:5 日前

1.未払い残業代の事例
この記事をお読みの方は、残業代の問題を抱えている経営者又は人事責任者だと思いますが、「未払い残業代があるので何とかしないといけない」と思いながらも、具体的な金額までは把握できていない方が多いのではないでしょうか。
具体的な金額を把握することは重要です。取り組み方が違ってくるからです。実は、見落としがちな部分も含めて計算してみると、その金額は想像以上かもしれません。
このページでは、具体的な事例を取り上げて未払い残業代の総額を計算しています。そのうえで、最後に対策をお伝えさせていただきます。残業代の問題には対策があるのです。
未払い残業代の金額の試算(10名・1日1時間の未払いで2000万円弱)
ここでは、10名の社員に平均して1日1時間分の未払い残業代があった場合、いくらになるかを試算してみたいと思います。
時給2000円、月21日で計算してみます。なお、賃金の消滅時効は現在は3年ですので、3年分で計算します。計算式は以下の通りとなります。
■ 未払い残業代の計算方法(計算式)
時給2000円
×割増率1.25
×1時間×21日×12カ月×3年
×10名分 未払い残業代総額約1,890万円です。 この金額は、時給2000円の社員10名に平均1日1時間分の未払い残業代があった場合の合計金額です。 時給が2000円より低い人もいるでしょうが、逆に、高い人もいるはずです。法定休日(3割5分)や深夜(+2割分増)の出勤があり、その日に未払いがあれば更に高額になります。1日1時間でこの金額です。
もし、30人いた場合、5670万円になります。
未払い残業代の事例を取り上げましたが、想像していたより、かなり高額なのではないでしょうか?
2.未払い残業代が生じる原因~未払い残業代は意外な理由でも生じます
ちなみに、この記事をお読みの方の中には、「平均して1日1時間の未払いなど当社にはない」とお考えの方もいるかもしれません。しかし、未払い残業代(未払い賃金)は以下のようなケースからも生じます。
社員が休憩をきちんと取れていなかったが、それを知っている会社が黙認していた
会社の更衣室で会社の制服へ着替えることを義務付けていたが、無給としていた
強制参加の朝礼が無給だった
30分未満の遅刻を適切な手続をとらず、30分単位に繰り上げ無給としていた
30分未満の残業は切り捨て無給としていた
一律支給の住宅手当や家族手当、毎月支給の成果給を割増賃金の算定基礎に入れてなかった(当該手当や成果給に対して割増賃金を支払っていなかった)
これらは全て違法ですので適切な対応を取らない限り賃金(残業代)の未払いとなります。
どれか、1つぐらいは心当たりはないでしょうか?
ちなみに、お昼の休憩についてですが、会社の所定労働時間が8時間なら、休憩をとらずに仕事していた場合、その日の労働時間は8時間を超えます。休んでいなかった休憩の時間がある場合、結果的に、1.25で支払う割増賃金と同様の扱いになってしまいます。
30人規模、60人規模の企業でも、着替えや朝礼の問題で全社員に30分の未払い残業代が生じていたということは珍しいことではありません。
他社がやっているから問題ないというのは誤り?!
ところで、ある経営者の方が「着替えは労働時間ではないのでは?友人の経営者の会社は賃金を払っていない(労働時間としていない)けど、労基署に問題視されなかったですよ」と言われたことがあります。
おそらく、その企業は自宅からの着替えを容認していたのではないでしょうか?そのような事情があれば話は変わってきます。
このことからわかる通り、少し事情が違っていただけで結論が変わってきます。残業代(労働時間)の問題は法律を抑えつつ、会社ができることとできないことを明確に分けていけば対策は可能なのです。
3.更に、多額の未払い残業代が生じるケースとは?
最後に、もっと多額の割増賃金(未払い残業代)が発生するケースについて触れておきます。ここでは、2つの事例を挙げてご説明します。
仮に、1日1時間分の未払い残業代が発生したとしても月に20時間を少し超えるぐらいの時間数でしょう。しかし、「適切な手続をとることなく、基本給に40時間分の時間外割増賃金を含んでいた」などといった場合には、その全額が無効とされることもあり、その場合には、上記とは比べ物にならない額の未払い残業代の額となります。なぜかをご説明します。
無効となった基本給に含まれている定額残業代も通常の賃金とみなされ、残業代計算の基礎に含める必要がある(時給単価が上がる)
その上がった時給単価で、残業1分目から全て未払いとみなされる。例:月50時間の残業をしていた場合、50時間分全ての残業代を支払う必要がある
定額残業代が否定されると、それは残業代ではなくなりますので、上記のようになるのです。曖昧な形で導入して良い制度ではありません。
また、歩合給として支払っていたつもりの賃金が法的に歩合給と認められなかったケースなども大変です。残業代の計算方法が大きく変わり、想定外の未払い残業代が発生する可能性があります。「【歩合給の本質】なぜ、歩合給は割増賃金が少なくなるのか?」の記事をお読み下さい。
このように、「会社が導入した制度自体が否定されるケース」では、労働時間の扱いを誤解していたケースよりも、はるかに多額の未払い残業代が生じる可能性があります。適切な制度設計が重要です。
4.未払い残業代問題の対策
ここまでお読みいただいた方の中には、「当社にも思い当たる節がある。では、どうしたら良いか?」と思われた方もいると思います。そこで、このパートでは、残業代問題の対策の基本をお話をさせて頂きます。
4-1 法律を知ることで解決できる問題も多い
まず、法律を知ることは非常に重要です。それだけで、解決できる問題もあります。先ほどの「2.未払い残業代が生じる原因~未払い残業代は意外な理由でも生じます」で挙げたケースは、どれも法律を知ることで問題の解決・改善が可能です。
着替えを労働時間にカウントしないで良いケースもあります。また、30分未満の遅刻で30分の賃金を控除することが認められるケースもあります。しかし、それは、法律上(認められた)手続を経ていることが前提になります。つまり、法律を知ることで解決・改善が可能ということです。
また、「3.更に、多額の未払い残業代が生じるケースとは?」でお話したケースは法律を踏まえて制度を導入したかどうかの違いに過ぎません。まずは、法律を知る(学ぶ)ことが残業代問題の解決へのスタートであり対策にもなるのです。
4-2 他社事例の重要性
しかし、法律を学んだとしても、会社として「できること」と「できないこと」が出てくると思います。例えば、「朝礼は任意参加なら労働時間としないで良い」と知ったとしても、「それは現実的でない(全員が参加しないと意味がない)」という会社がほとんどではないでしょうか。
その際に、役に立つのは「他社がどうしているか」です。多くの他社事例を知ることで問題が解決することも少なくありません。なお、ここで言う「他社がどうしているか」は「どのような法的枠組みでやっているか」ということです。「朝礼を労働時間にしているかどうか」ではありません。
以上、法律を知り(学び)、他社事例と御社の事情を照らし合わせていくことで、残業代問題の「現実的な対策」が可能になります。
5.自社での対策に難しさを感じたら、専門家にご相談をお勧めします
法律を知ることで問題が改善することは多いのですが、法律は、ほんの少しのニュアンスの違いで、意味が変わってしまいます。そういう理由から、どうしても、書籍もインターネット上の情報も、法律用語が並び、話が難しくなりがちです。「色々調べてもわからない」というご意見を1番良く伺うのが残業代・労働時間の問題です。
また、他社がどうしているかなどの情報はインターネット上にはあまりありません。人件費の問題にも直結しますので、未払い残業代の問題について懸念があるなら、専門家の知識・経験に頼った方が良い分野だと思います。
身近に信頼できる専門家がいるなら、その方にご相談するのが一番です。もし身近に頼りになる専門家がいない場合は、当事務所でも無料相談を行っていますのでご利用ください。
当事務所は就業規則の関連業務に専門特化し続けてきましたので、一般的なケースから特殊なケースまで様々な残業代対策の解決事例があります。初見の問題はほぼありません。1日、お時間の制限はなく、じっくりとお話を伺いますので、その場で、御社の問題にも現実的な解決策(「これならできそうだ」という対策)をお示しできるのではないかと考えています。
一切の営業行為を行わないことをお約束いたしますが、経営者のご参加をお願いしています。また、賃金・残業代の問題は月3社限定となっております。お申込やご質問等は以下のページからお願いいたします。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋 裕司
執筆者プロフィール(実績)
業務の99%超を就業規則関連で占める就業規則特化の専門家である。その中でも、残業代の問題に特に強い分野である。業務の依頼を受けた際に、賃金を含めた人件費の問題の相談を受けないことはほぼなく、定額残業代、みなし残業代、未払い残業代(対策)、残業の削減等、あらゆる相談事例を経験している。相談を受けた際に初見の問題はほぼない。M&A前の残業代の問題など専門性の高い業務の経験もある。なお、お客様に伺ったところ、残業代の問題に関して効果があったとお答えになった企業は9割を超えている。人件費(賃金・残業代)専門の社会保険労務士といえる。
残業・残業代の問題に関しては、他社にコラム・専門記事を寄稿・採用された多くの実績がある。
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