
未払い残業代の事例
この記事をお読みの方は、残業代の問題を抱えている経営者又は人事責任者だと思いますが、「未払い残業代があるので何とかしないといけない」と思いながらも、具体的な金額までは把握できていない方が多いのではないでしょうか。
具体的な金額を把握することは重要です。取り組み方が違ってくるからです。実は、見落としがちな部分も含めて計算してみると、その金額は想像以上かもしれません。
このページでは、具体的な事例を取り上げて未払い残業代の総額を計算しています。
未払い残業代額のケーススタディ(10名で1日1時間で2000万円弱)
ここでは、10名の社員に平均して1日1時間分の未払い残業代があった場合、いくらになるかを考えてみたいと思います。
時給2000円、月21日で計算してみます。なお、賃金の消滅時効は現在は3年ですので、3年分で計算します。計算式は以下の通りとなります。
■ 未払い残業代の計算方法(計算式)
時給2000円
×割増率1.25
×1時間×21日×12カ月×3年
×10名分 未払い残業代総額約1,890万円です。 この金額は、時給2000円の社員10名に平均1日1時間分の未払い残業代があった場合の合計金額です。 時給が2000円より低い人もいるでしょうが、逆に、高い人もいるはずです。法定休日(3割5分)や深夜(+2割分増)の出勤があり、その日に未払いがあれば更に高額になります。1日1時間でこの金額です。
なお、30人いた場合、5670万円になります。
未払い残業代の事例を取り上げましたが、想像していたより、高額なのではないでしょうか?
未払い残業代が生じる原因~未払い残業代は意外な理由でも生じます
ちなみに、この記事をお読みの方の中には、「平均して1日1時間の未払いなんて当社にはない」とお考えの方もいるかもしれません。しかし、未払い残業代(未払い賃金)は以下のようなことからも生じます。
社員が休憩をきちんと取れていなかったが、それを知っている会社が黙認していた
会社の更衣室で会社の制服へ着替えることを義務付けていたが、無給としていた
強制参加の朝礼が無給だった
30分未満の遅刻を適切な手続をとらず、30分単位に繰り上げ無給としていた
30分未満の残業は切り捨て無給としていた
一律支給の住宅手当や家族手当、毎月支給の成果給を割増賃金の算定基礎に入れてなかった
これらは全て違法ですので適切な対応を取らない限り賃金(残業代)の未払いとなります。
どれか、1つぐらいは心当たりはないですか?
ちなみに、これは余談ですが、会社の所定労働時間が8時間なら、休憩をとらずに仕事していた場合、その日の労働時間は8時間を超えます。とっていなかった休憩の時間がある場合、結果的に、1.25で支払う割増賃金と同様の扱いになってしまいます。
着替えや朝礼の問題で全社員に30分の未払い残業代が生じていていたということは珍しいことではありません。
他社がやっているから問題ないというのは誤り?!
ところで、ある経営者の方が「着替えは労働時間ではないのでは?友人の経営者の会社は賃金を払っていない(労働時間としていない)けど、労基署に問題視されなかったですよ」と言われたことがあります。
おそらく、その企業は自宅からの着替えを容認していたのではないでしょうか?そのような事情があれば話は変わってきます。このことからわかる通り、少し事情が少し違っていただけで結論が変わってきます。残業代(労働時間)の問題は法律を抑えつつ、会社ができることとできないことを明確にわけていけば対策は可能なのです。
更に、多額の未払い残業代が生じるケースとは?
最後に、もっと多額の割増賃金(未払い残業代)が発生するケースについて触れておきます。ここでは、2つの事例を挙げてご説明します。
仮に、1日1時間分の未払い残業代が発生したとしても月に20時間を少し超えるぐらいの時間数でしょう。しかし、「適切な手続をとることなく、基本給に40時間分の時間外割増賃金を含んでいた」などといった場合には、その全額が無効とされることもあり、その場合には、上記とは比べ物にならない額の未払い残業代の額となります。なぜかをご説明します。
無効となった基本給に含まれている定額残業代も通常の賃金とみなされ、残業代計算の基礎に含める必要がある(時給単価が上がる)
その上がった時給単価で、残業1分目から全て未払いとみなされる。例:月50時間の残業をしていた場合、50時間分全ての残業代を支払う必要がある
定額残業代が否定されると、それは残業代ではなくなりますので、上記のようになるのです。曖昧な形で導入して良い制度ではありません。
また、歩合給として支払っていたつもりの賃金が法的に歩合給と認められなかったケースなども大変です。残業代の計算方法が大きく変わり、想定外の未払い残業代が発生する可能性があります。「【歩合給の本質】なぜ、歩合給は割増賃金が少なくなるのか?」の記事をお読み下さい。
上記のように、「会社が導入した制度自体が否定されるケース」では、労働時間の扱いを誤解していたケースよりも、はるかに多額の未払い残業代が生じる可能性があります。適切な制度設計が重要です。
会社の残業代対策 無料相談のご案内~専門当事務所が
残業代の問題は、多額の人件費に直結し、多くの経営者が漠然とした不安を抱えていることと思います。この記事で取り上げた未払い残業代の原因を見ても、具体的な対策が分からないと感じることは自然なことです。
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最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表・特定社会保険労務士 小嶋 裕司
執筆者プロフィール
業務の99%超を就業規則関連で占める就業規則特化の専門家である。その中でも、残業代の問題に特に精通している。業務の依頼を受けた際に、賃金を含めた人件費の問題の相談を受けないことはほぼない。定額残業代、みなし残業代、未払い残業代(対策)、残業の削減等、あらゆる相談事例を経験している。M&A前の残業代の問題など専門性の高い業務の経験もある。なお、お客様に伺ったところ、残業代の問題に関して効果があったとお答えになった企業は9割を超えている。人件費(賃金・残業代)専門の社会保険労務士といえる。
残業・残業代の問題に関しては、他社にコラム・専門記事を寄稿し、以下の実績がある。
■『かいかつ人事労務!専門家の知恵』2022年5月2日
タイトル『だらだら残業を劇的に削減した事例~適切な残業の許可制の導入』
ブレインコンサルティングオフィス
■「HRブログ」(運営:東証プライム上場企業 株式会社 クロスキャット
『勤怠管理で残業削減:残業の事前申請・許可制の成功事例とその効果』
■事業承継協会機関誌『ツナグ』
タイトル『後継者が先代の反発を受けずにスムーズに新制度を導入する方法』
~残業代の問題を例に挙げコラムを寄稿